この声明は、英語版『SPARTACIST』付録(2021年4月)から翻訳されたものである。
ひどい状態の医療、老朽化した住宅、利潤目的の生産、帝国主義の支配。資本家階級支配の性格そのものが、Covid-19の発生以来、世界中を荒廃させてきた経済・健康危機に拍車を掛けている。寄生的ブルジョアジーは自身の利益に最も役立つ手段でこのパンデミックに対応し、ワクチン接種までの間、全ての人々を強制的に自宅に閉じ込めている。
各国のブルジョアジーによるロックダウンは反動的な公衆衛生措置である。労働者はこれに反対しなければならない!ロックダウンは感染拡大を一時的に遅らせるかもしれないが、しかし労働者階級の闘争能力を弱めてしまうのだ。ロックダウンは産業やサービスの多くの部門を全体的に停止することで、経済危機を引き起こし、膨大な人々を失業へと追いやっている。学校や保育施設の閉鎖は、家族の抑圧的な負担を増大させた。国家の弾圧が著しく増大し、そのなかで民主的権利と労働者階級の権利が骨抜きにされている。集会、抗議、旅行、ストライキ、労働組合の組織化、これら全てが制限されるか禁止されてしまった。ロックダウンは労働者階級の闘争を抑える狙いがある。この闘争こそ、労働者が真に自身の健康を守ることができ、現在の危機の社会的原因と闘うことができる唯一の方法である。
資本家たちは、「痛みの分かち合い」を引き合いに出し、労働者階級に対して電撃戦を開始している。労働組合潰し、大規模な解雇、賃金カット、労働強化が「新常態」である。命に関わるウイルスと資本家による激しい攻撃という一体となった脅威に直面して、労働者階級は武装解除されたままの状態に置かれている。世界中で、労働組合と労働者党双方の親資本主義指導者たちは、この攻撃のなかで支配階級に忠実に協力している。挙国一致やウイルスとの闘いという名の下に、彼らは労働者階級を裏切っているのである。
ブリテンとオーストラリアの労働党から、ドイツの社会民主党と左翼党、フランスの社会党と共産党、そして南アフリカ共産党に至るまで、労働組織の裏切りの指導者は、各地域でまた全国的にロックダウンを強制するうえで、そしてロックダウンを労働者や抑圧された人々に押し付けるうえで、極めて重要な役割を演じている。アメリカ労働総同盟・産業別組合会議(AFL-CIO)から、メキシコとイタリアの労働組合、日本の連合、全労連、全労協に至るまで、労働組合指導者たちは、組合員にブルジョアジーの政策、つまり「家に留まれ、くたばれ!」という政策を支持するよう呼びかけているのである!
労働者階級の健康と暮らしを防衛する緊急の必要性は、労働運動の新たな指導部を鍛え打ち固めるという任務を直接提起している。労働組合は、産業を停止する資本主義国家に反対し、安全な労働条件を確保するために闘うことが必要である。老朽化した医療と住宅のインフラは、今すぐ再構築し拡張する必要がある。大規模な公共事業プログラムと結び付いた資本家の最良の不動産の収奪が、働く人々にまともな生活環境を提供するために必要である。
労働者と抑圧された人々の基本的利益は、どの段階においても、資本家による階級支配の支柱と衝突する。現在の危機は、家族の束縛から女性を解放する必要性、人種の抑圧を終わらせる必要性、そして帝国主義による搾取からの解放の必要性を鋭く提起している。人類にとって前進する唯一の道は、一連の労働者革命によって、そして国際的な社会主義計画経済の確立によってもたらされるのである。
既存の労働運動指導者たちとその似非マルクス主義追随者たちの完全な破産に直面するなかで、階級意識あるプロレタリアに提起された極めて重要な問題は、トロツキズム,つまり真のマルクス・レーニン主義の革命的綱領に基づく指導部が必要だということである。国際共産主義者同盟(第四インターナショナリスト)(ICL)は、国際的なレーニン主義前衛党を建設しようと努めている。この前衛党は、プロレタリアートに革命的意識をもたらすための、また労働者の権力を打ち立てるための必要不可欠な手段である。社会主義革命の世界党である第四インターナショナルを再度鍛え打ち固めよ!
階級協調と挙国一致を打倒せよ!
昨年来、ICLの立場は、ロックダウンを必要として受け入れることであった。我々はこの立場を撤回し拒絶する。この立場は、ロックダウンが命を救うという理由で、全ての階級がロックダウンを支持すべきという「挙国一致」の掛け声への屈服であった。
このいわゆる世間一般の大義のために、労働組織のトップたちはプロレタリアートの利益を進んで犠牲にした。一般的な公衆衛生と同様に、パンデミックと闘うことは階級対立より上に位置づくものではない。「命を救う」ことにたいする資本家の関心の背後で、彼らは実際自身の階級的利益を追求している。公衆衛生におけるブルジョアジーの関心は、自身の健康を守りながら、可能な限り安価なコストで搾取するのに十分適した労働力を維持することである。この反動的な目的とは反対に、プロレタリアートは全ての人々にとって最良の生活環境と医療を確保することに関心を持っている。こうした明確に相対立する階級的利益は、パンデミックか否かにかかわらず、調和させることはできない。ブルジョアジーに反対する独立した労働者階級の動員によってのみ、この階級が自身の健康と安全を防衛することができるのである。
ブルジョアジーは、労働者の利益のために闘うことは病気を広める、という偽りで労働者を恐喝する。つまり、労働組合の会合や抗議は公衆衛生を脅かすことになるとか、医療労働者がより良い労働条件のために闘うことで人々の命を奪うとか、学校や保育所は子どもたちを守るために閉鎖しなければならないとかである。こうしたことは真っ赤な嘘である!ロックダウンに反対して闘うことは、現在の大きな災厄の社会的原因に対処するために必要な出発点である。労働組合の会合は労働者の自己防衛にとって必要不可欠である。医療労働者による闘争はより良い医療への道である。学校や保育所の閉鎖に反対して闘うことは、より良い学校と保育のための前提条件であり、女性解放のための闘争を促進するのである。
『資本主義の死の苦悩と第四インターナショナルの任務』(1938年)の中で、ボルシェビキの指導者レオン・トロツキーは次のように主張した。
「搾取に基礎をおく社会にあっては、最高の道徳は社会主義革命の道徳である。労働者の階級意識、自らの力に対する彼らの確信、闘争における自己犠牲への用意、―これらを高める手段は全て善である。抑圧者に対する恐怖と従順さを被抑圧者の間にうえつけるような手段は許しがたい。」
ブルジョアジーは、いつも自身の犯罪を正当化するために、例えば「命を救う」といった究極の道徳的法則や基準を利用する。ドイツとフランスの帝国主義者は欧州連合を利用し、「平和」と「社会的発展」の名の下にヨーロッパ中のプロレタリアートを略奪している。米帝国主義者とそのNATO同盟諸国は、「民主主義」と「自由」の名の下に、リビア、イラク、アフガニスタン、その他多くの国々を荒廃させてきた。彼らは、1992年に、「飢餓の人々に食料を与える」ためソマリアに侵攻した。ブルジョアジーが緊急に「命を救う」ことについて叫ぶときには、それはいつも、支配階級への服従を植え付けるために利用され、自身の利益の下に動員する目的で挙国一致を奮い起こすのに利用されるのである。
労働組合による労働安全衛生管理を!
資本主義国家は、その中核に警察、監獄、軍隊、裁判所で構成され、搾取階級の支配と利益を維持するための組織された暴力装置である。マルクス主義者が、義務的なワクチン接種のように、国家による強制された、労働者階級に有益なある公衆衛生対策を支持する一方で、健康と安全を守るため国家に依存することは自殺行為である。
ギリシャ共産党のスターリニストたちは、そうしたマルクス主義の基本事項を捻じ曲げる専門家である。彼らが労働組合で提起する主要な要求の一つは以下の点である。
これは労働者階級を資本主義国家に縛り付けることを意味し、そしてまた国家の衛生機関による慈善への幻想を広めることを意味する。労働者は労働組合による労働安全衛生管理のために闘わなければならない。資本主義国家ではなく労働組合こそが、どのような条件の下で働くのが安全であるかを決定すべきなのである。
労働組合は労働者階級の基本的な防衛組織である。労働組合の目的は労働者が家に留まるために闘うのではなく、職場の労働者を防衛することである。これに反して、多くの国々では、教員組合指導者たちは、教師と生徒を「守る」ため、政府に学校を閉鎖し続けるよう求めて闘ってきた。これは安全な学校のための闘いを臆病にも拒絶する行為である。労働組合官僚による「家に留まり待機する」政治に反対し、より良い学校と安全な職場のために、閉鎖に反対して労組の組合員と全労働運動を動員することに基づき、階級闘争指導部が打ち立てられなければならない。
労働組合を組織化する運動がプロレタリアートを団結し強化するために緊急に必要とされている。臨時や下請けの労働者は完全な組合賃金や諸手当が付与されて労働組合に加入させることが必要である。社会的な力をほとんど持たない小売り、レストラン、バー、配送サービスなどの従業員を労働組合に組織することは、彼らを組織された労働者階級の保護の下に置くだろう。
経済を再開せよ!失業と闘え!
トロツキズムの詐称者たちは、労働組織の裏切りの指導者に追随するなかで、ブルジョアジーの前にひれ伏してきた。労働者の闘争(Lutte Ouvrière)、国際マルクス主義テンデンシー(International Marxist Tendency)(IMT)、世界社会主義ウェブサイト(World Socialist Web Site)、インターナショナリスト・グループ(Internationalist Group)、トロツキストフラクション―第四インターナショナル(Trotskyist Fraction—Fourth International)とその仲間たち。これら全てはプロレタリアートを裏切りロックダウンを支持している。
例えば、IMTは次のように要求した。「必須ではない生産は全て直ちに停止すべきである。労働者は必要な限り賃金の全額支給で帰宅させる必要がある」(Marxist.com、2020年3月20日)。これはより多くの解雇につながりうるだけの、まったくの反動的な呼びかけである!IMTは、労働者階級の多くの階層を失業させ、生活保護の状態に追いやりたいのである。
労働者階級は、生産におけるその役割から、彼らの社会的な力を引き出す。労働運動は、全員に仕事を配分する目的のなかで、労働組合の運営する採用や訓練のため、また賃金カットのない週労働時間短縮のために闘うことによって、解雇や強制的な自宅待機に反対することが必要である。現在の危機は生産とサービスの増大を切に必要としている。つまり、より多くのより良い医療、公営住宅の大規模建設、学校や保育所のために広々とした十分換気の良い建物、より良い公共交通機関である。経済を再開し拡大することは、働く人々の要求を満たすのに必要であり、失業や貧困化と闘うために必要である。
利用者に無料で質の高い医療を!
利益目的の生産体制は適切な医療を提供することができない。民間と宗教系の病院そして製薬会社を補償なしで収奪せよ!医療と病院労働者の労働組合運営による大規模な訓練と採用を!ワクチンや医薬品が世界中で大量生産できるように特許を廃止せよ!
医療制度の崩壊に瀕した事態に直面して、あらゆる色合いの改良主義者は医療を国有化せよと声高に叫んでいる。一例を挙げれば、トロツキストフラクションの米国支部である左翼の声(Left Voice)は、「労働者管理の下で全ての健康関連産業を国有化する」よう呼びかけている(『左翼の声』、2020年4月13日)。こうした社会民主主義者の左翼的響きがする大げさな言葉にごまかされてはならない。左翼の声はいっそう厳しいロックダウンを主張しているのである。それはプロレタリアートによるいかなる種類の大衆行動も一層抑制するだろうし、より良い医療のための闘いを不可能にするであろう。
ここに左翼の声による労働者管理のお手本がある。「アルゼンチンにおいて、労働者はこの管理がいかにして実施可能かを我々に示している。国中でボスが不在のなか、労働者に管理された工場は、強欲ではなく必要に応じて生産を始めている。」左翼の声が述べているのは、資本主義アルゼンチンで、幾つかの破綻した産業構造上末端の工場の接収である。これは必要とされるものの手本ではない。左翼の声による展望は、資本主義の枠組みにおける国営医療制度の労働者管理、すなわち制度化した階級協調のためのものである。医療を不当利得者から解放するには、ブルジョア国家を一掃し、この国家をプロレタリアート独裁で置き換え、資本家階級を収奪することによってのみ達成することができるのである。
労働者階級は全ての抑圧された人々を
防衛しなければならない!
中産階級の最下層の人々は壊滅的な打撃を受けている。労働組織の指導者と全ての改良主義左翼によるロックダウンへの犯罪的支持は極右に闘う地を譲り渡し、悪意ある反動主義者やあからさまなファシストが民主的権利の擁護者のふりをし、また打撃を被ったプチブルジョアジーの擁護者のふりをするのを許している。革命党は、抑圧された全ての人々を防衛するために労働者階級を動員し、ブルジョアジーに対する闘いにおいて抑圧された人々を労働者の側に結集させるであろう。
アジア、ラテンアメリカ、アフリカでは、何百万もの貧しい農民たちが地主や銀行によって骨の髄まで絞り取られる一方、路上の商人たちはロックダウンによって餓死に瀕している。いたるところで、小さな店、バー、レストラン、そして学生たちも借金で息も絶え絶えである。彼ら全ての借金を帳消しにせよ!
何百万ものホワイトカラー労働者が在宅勤務を余儀なくされている。「テレワーク」は、解雇や無給の残業を助長し、労働者たちを細分化し、労働組合に対する攻撃を容易にして、組合組織化を事実上不可能にする。ストライキは会議用のズームではなくピケラインで勝ち取られる。その名に値するどの労働組合も「テレワーク」計画に反対することが必要である。
移民は労働者階級の極めて重要な構成員であり、惨めな賃金で大打撃を受けたサービス産業に偏って雇用されている。労働者階級は、階級全体を団結させるため、全ての移民にたいする完全な市民権のために闘うことが必要である!
家族の機能を社会化せよ!
ブルジョアジーは全力で歴史の歯車を後戻りさせようとしている。ロックダウンは保育、教育、高齢者介護のすべての仕事を一方的に家族に押し付け、それも主として女性に押し付けている。女性は家庭へと戻るのを強いられ、男性よりも数多くで仕事を失い、急増する家庭内暴力の犠牲者である。子どもたちや10代の若者は両親と一緒に閉じ込められる。高齢者は粗末な介護施設に残され孤独死する。
ロックダウンが一つのことを示したとすれば、それは家族の中で家事を再分配するというフェミニズムの綱領が破綻しているということである。必要なことは家事を家族から取り上げることである。つまりは、無料の24時間の保育、共同のキッチンや洗濯場、質の高い高齢者ホームである。
ロックダウンは資本主義の支柱である諸機関、つまり国家、教会、そして家族を強化してきた。女性の解放は、家族を社会化された育児や家事で置き換えることを含む世界的な社会主義的転換の一部としてのみ達成されることができる。社会主義革命を通じて女性の解放を!
帝国主義を打倒せよ!
少数の大国が世界の分割を巡り競い合い、何十億もの人々を搾取する世界帝国主義体制は、まさに現在の世界的危機の根源である。このパンデミックは協調した国際的な対応を切に必要としている。しかし、帝国主義間対立と競争し合う民族国家に基づく体制においては、こうした対応は不可能である。帝国主義は、ウォールストリート、東京、ロンドン、フランクフルト、パリの諸証券取引所の利益のために、世界の経済的、社会的、文化的な発展を踏みつぶし押し止めている。帝国主義者は現在の危機を利用して、従属国に対する国際金融資本の締め付けを強化した。帝国主義が課した債務を帳消しにせよ!国連、IMF、NATO、NAFTA 2.0、欧州連合を打倒せよ!
中国を防衛せよ!帝国主義者は、1949年の革命を転覆するため、そしてまた中国の歪曲された労働者国家を略奪目的で開放するため、資本主義反革命に向けた取り組みを倍化している。スターリニスト官僚を一掃する労働者政治革命を!
新たな十月革命を!
韓国、スウェーデン、それともオーストラリアか?ブルジョア新聞は、どの国が大量死と大規模な弾圧とのバランスをより良く取ってきたかを巡り、際限のない議論で溢れている。我々マルクス主義者はまったく異なる手本を持っている。それは1917年のボルシェビキ革命である。資本主義の搾取という束縛を打ち破ることによって、レーニンとトロツキーのボルシェビキ指導部の下で労働者階級は、人類進歩の巨大な前進を遂げた。ソビエト労働者国家の公衆衛生制度は、世界大戦によりすでに荒廃した状況のもとで、内戦と帝国主義の侵略という試練の中で鍛え打ち固められたとはいえ、その偉大な成果の一つであった。この制度の創設を指導した人物であるニコライ・セマシコは、1919年に次のように述べた。
—国際共産主義者同盟(第四インターナショナリスト)国際執行委員会 (2021年4月19日)