教会と慈善団体とCIAのお金
社会フォーラムの背信詐欺
世界社会フォーラム(WSF)に関する以下の記事は、スパルタシスト同盟/英国の機関紙、『ワーカーズ・ハンマー』二〇〇五年夏号に収められた「ヤング・スパルタカス」のページから採録したものである。
社会フォーラムは、世界貿易機関(WTO)に対する一九九九年シアトルでの抗議行動、そしてそれに続くWTOとIMFに対する世界各地での大衆的な抗議行動の結果として設立された。その目的は、資本主義による略奪行為に反対する人々が資本主義制度そのものに刃向かわないよう保障することである。社会フォーラムは、現代版の人民戦線を創りあげることによって、資本主義の枠組みに反対するかもしれない闘争を阻止するねらいがある。つまり社会フォーラムは、労働者階級諸党による資本家諸党との階級協調主義の政治ブロックなのである。このブロックのなかでは、労働者階級の政治がブルジョア国家と資本主義の防衛においてブルジョアジーの政治に従属するのである。社会フォーラムに対するわれわれの態度は、他のどんな人民戦線に対するのと同様に、こうしたぺてんを鋭く特徴付け説明することで介入し、フォーラムに反対することである。そして抑圧や搾取と闘いたいと真に望んでいる人々を、国際主義の革命的プロレタリア綱領へと獲得するよう努める。
日本では、社会フォーラムはあまり知られていない。しかし最近になって、村岡到のような燃え尽きたいわゆるマルクス主義のインテリたち、ATTAC日本やかけはしや民主的社会主義運動(MDS)のようなグループが、社会フォーラムを促進しようとしてきた。ATTACという組織は、当初から世界社会フォーラムの創設において重要な役割を演じてきた。実際、ATTACは、資本主義に反対する素振りすらまったくしない完全なブルジョア組織である。ATTACフランスは、ここ数年に亘り、年間予算の少なくとも十パーセントをフランス帝国主義国家から受け取ってきたのである。ATTACフランスの指導者スーザン・ジョージは、IMFを他の機関に置き換えよとかIMFを廃止せよという呼びかけに反対している。そしてその一方でATTACは、「資本家の財産権には雇用し解雇する権利も含まれる。問題はどの点までかを知ることである」と主張している(『新しい株式所有資本主義の規則』、ATTAC、二〇〇一年五月刊)。ATTACは最初、国際金融取引に課税するいわゆる「トービン税」によって資本の不安定な流れに制限を加える制度を喧伝し、そして資本主義制度を安定化つまりそれを維持し永続させるために設立された。「トービン税には普遍的な目標がある。それは、安定した金融財政システムを再構築するため、交渉によって世界の全政府を協調的な取り組みへと統合するというものである…」(『ATTACに関するすべて』)。これは明らかに資本主義の打倒とは何の関係もない!にもかかわらず、かけはしの恥知らずな日和見主義者たちは、そのカードルを使って、ATTAC日本を設立したのである。
『かけはし』二〇〇五年一月二一日号で、ATTAC日本のあるメンバーは、フランス帝国主義の大統領ジャック・シラクを賞賛した。それは、二〇〇五年初めにタボスで開催された世界経済フォーラムの演説で、シラクが「国際連帯税」なるものを皮肉にも提案したからである。かけはしがシラクに拍手喝采するのに忙しくしているが、そのシラクは、フランス人労働者への攻撃を開始し、毎日のように移民を強制送還し、またフランス軍をアフリカの象牙海岸に派遣して住民を恐怖に陥れている。その一方で日本の他の世界社会フォーラム推進役である民主的社会主義運動は、JRを再度国有化するために、日本の鉄道労働組合を鉄道会社株主と団結させようしているのである!
二〇〇四年十二月、ATTAC日本は京都社会フォーラムを組織した。そのフォーラムは世界社会フォーラムの原理に基づき組織されたという理由で誇らしげに歓迎された。「その質においては、世界社会フォーラムや世界各地の社会フォーラムの運動につながるものである。」(『かけはし』二〇〇五年一月一日)このイベントは「行政や外部の基金に頼ることなく、また、有名人や大きな団体に依存することなく…」と主張する一方で、イベント支持者には、中小企業経営者たち、すなわち中小資本家たちの諸連合も含まれていたのである!
ATTACに加えて、世界社会フォーラムも誤った名で呼ばれる「非政府」組織(NGO)にすっかり支配されている。実際、こうした国際的な組織の多くは認可され、運用資金の多くを国連や宗教団体や資本主義国家から受け取っているのである。国際舞台で日本帝国主義の利益を代表する役割を担っている日本外務省は、NGO支援部門である民間援助室を設けている。この民間支援室は、二〇〇三年度予算で十七億六千万円もの大金をNGOに資金提供しているのである!NGOは「非政府組織」ではなく「政府組織」と改称すべきである。多くのNGOは、日本帝国主義が「第三世界」で経済的略奪を実行するために、「人間の顔」を提供するのに利用されている。政府とNGOとの協力は、「援助をうけた国と地域における日本の存在を強化した」(『平成十六年度外務省・NGO共同評価:NGO事業補助金制度の評価』)。世界じゅうでNGOの主要なスポンサーは国連である。そしてその国連自身は、帝国主義、特に米帝国主義の略奪行為にたいして人道主義的装い与えるために設立された。二〇〇三年ブラジルのポルト・アレグレで開催された世界社会フォーラムは、こうした伝統のなかで、国連事務総長コーフィ・アナンから支持のメッセージを受け取ったのである。
日本で社会フォーラムを後押ししているグループは、根本的に、これまで世界社会フォーラムを組織してきた様々な社会民主主義的、改良主義的なグループと政治的に何ら変わりがない。日本における改良主義の左翼が労働者階級と若者に提供しなければならない唯一の綱領は、資本主義制度の下でささやかな改良を達成するために、階級敵と協調するという綱領なのである。反対に、革命的マルクス主義者の基本的任務は、搾取、帝国主義戦争、人種差別主義、女性の抑圧や性的抑圧に責任を負う資本主義支配階級の代表者と共通の進歩的未来を交渉することが可能であるという考えから、労働者階級や急進的な若者たちを分裂させることである。国際共産主義者同盟(第四インターナショナリスト)の日本支部、スパルタシスト・日本グループの目的は、革命的マルクス主義を労働者階級に再度もたらし、そして未来の勝利したプロレタリア革命の基礎を築くことである。われわれはこの任務に専心する党を建設しようとしている。
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資本主義支配者が自身の支配に対し感知するどんな抗議行動にも対処するのに利用する二つの主要な手段は、国家弾圧と政治的な取り込みである。「反グローバリゼーション」の抗議を取り込む巧妙な手法の中で最たるものが、世界社会フォーラムとヨーロッパ社会フォーラム(ESF)である。こうしたフォーラムの目的は、急進的な若者を資本主義国家権力との激しい対立から引き離し、一方こうしたお喋りの場が「非議会的」であるかのように装いつつ、議会改良主義という「民主的選択肢」の背後に若者を封じ込めることである。
社会フォーラムやいわゆる「反資本主義」の運動は、実際資本主義支配に何ら深刻な脅威を及ぼさないものである。そのオルガナイザーたちは「ソ連邦以後」の世界という広く流布した神話を信じている。その神話とは、資本主義秩序に反対する階級闘争は過去のものであるとか、労働者階級は社会を変えるための要素として重要ではないとか、達成可能な最良の事柄は資本主義制度に「人間の顔」を与えることであるとか、といったものである。真実は、資本主義制度が依然として労働者階級に依存しており、従って労働者階級は資本主義を打倒する力を持っているということである。これを達成するために、労働者階級は自身の利益が資本家の利益と相容れないということを意識しなければならない。社会フォーラムはこうした階級意識の障害物にほかならないのである。
社会フォーラムと国家資金援助
どの社会フォーラムも、開催された国々の資本主義国家によって資金を提供され、ブルジョア地方政府あるいは市長オフィスから公的な援助を受けてきた。世界社会フォーラムのスポンサーの一覧には、ポルト・アレグレ市政府やリオ・グランデ・ド・スール州政府やブラジル連邦政府だけでなく、ブラジル銀行やブラジル最大の石油会社であるペトロブラス社をも含まれている!二〇〇二年に開催されたヨーロッパ社会フォーラムは、フィレンツェ市によって資金援助され、また二〇〇三年のパリにおけるフォーラムは、シラク政府より資金提供された。さらに二〇〇四年ロンドンでのフォーラムは新労働党のケン・リヴィングストンの市長オフィスが資金を拠出し主催した。このリヴィングストンは帝国主義によるセルビア爆撃を支持し、二〇〇〇年のメーデーには「資本主義反対」の抗議者たちに対する警察のテロ行為を率先して応援した人物である。
全ての社会フォーラムも真に野蛮で狂った米ブッシュ政権に対して毒づいているが、こうした世界社会フォーラムへの資金提供者のなかには、ロックフェラー兄弟基金やフォード財団といったような財団が紛れもなく含まれているのである。一九一四年四月二〇日コロラド州ラドローで炭鉱労働者組合が激しいな闘争を繰り広げるなか、炭坑会社警備員と州軍は子供を含む二十人を殺害した。ロックフェラー財団は、この出来事の後でロックフェラーへの悪評を払拭するために使われた。フォード財団は、米国の自動車産業での闘争が最高潮に達した一九三六年に一躍その名を知られるようになった。そして第二次世界大戦以降は、世界中の反共主義運動に向けたCIA資金のパイプ役となったのである。
世界社会フォーラムは、米帝国主義の最も悪名高いいくつかの代理人に資金提供される一方で、帝国主義の利益を脅かす恐れがあると見なされた人々をあまり歓迎してこなかった。十四の原則を定めた世界社会フォーラム憲章において、「政党代表も軍事諸組織の代表者もこのフォーラムに参加することができない」という声明は、メキシコのザパティスタやコロンビア革命軍(FARC)を排除するために使われてきた。「五月広場の母たち」でさえ、二〇〇二年のWSFから締め出された。「五月広場の母たち」とは、、一九七六年から八三年のアルゼンチン軍事独裁政権下で「行方不明」になった左翼の人々の母親たちが結成した組織である。その一方で、資本主義政府の様々な指導者には温かい歓迎の手を差しのべているのである。そうした指導者は、資本主義国家としてより普通に知られる「武装した人間の特殊な部隊」を統率している。
階級協調の左翼的見せかけ
二〇〇一年に開催された第一回の世界社会フォーラムは、似非トロツキストの統一書記局派によって一部組織された。この統一書記局派は、日本革命的共産主義者同盟(かけはし)が加盟している国際組織である。統一書記局派では、急進的な若者たちが、ふざけた「参加型予算」を通じて、資本主義国家のために緊縮財政を遂行するよう仕込まれていた。今日、ブラジルの大統領ルラが率いる労働者党(PT)は、統一書記局派のメンバーである「同志大臣」の援助のもとで、ブラジルの資本主義国家を運営している。彼らは、IMFの命令を卑屈なまでに固守し、貧困に陥った人々に耐乏生活を押し付けているのである。
一月に開催されたごく最近の世界社会フォーラムで、ルラはIMFと世界銀行に露骨に迎合し協力する彼の姿勢に反対している多くの出席者から激しいブーイングを浴びた。しかし実際、ルラは国家権力のレベルで世界社会フォーラムの政治と綱領を主張しているのである。ブラジルでのルラの政府のように、人民戦線は、不信感をもたれたブルジョア政党よりもより効果的に労働者に耐乏生活を受け入れさせるために、支配者によって必要とされるものなのである。
ルラがブラジルの労働者や農民を攻撃したことで現在不信感をもたれているなかで、二〇〇五年の世界社会フォーラムにおける新ヒーローは、ベネズエラの大統領ウーゴ・チャベスであった。チャベスはベネズエラの抑圧された人々の間で人気を博しているが、それはチャベスが原油で得られる収入で貧しい人々に恩恵を与える改革を導入したためである。チャベスはまた、米国の追従者と見なされていない。ところが、このチャベスの改革は、基本的な構造改革でさえなく、ましてや社会革命などではなく、世界原油価格の変動に従属しているだけなのである。
チャベスはベネズエラの資本主義のために統治しているブルジョア民族主義者である。民族主義の人民主義や経済の新自由主義は、同じ資本家階級が支配していくために選択した別の政治にすぎない。チャベスが、ブッシュ政権のネオコンたちだけでなく、ベネズエラの多くの大土地所有者や資本家からののしられているのは事実である。ブッシュ政権のネオコンたちは、二〇〇二年春にチャベスに対する軍事クーデターを支持した。しかし、より合理的な帝国主義の代表者たちは、大衆に人気のあるチャベスを、自分たちの投資の保護を信頼して任せることのできる人物と見なしているのである。チャベスが二〇〇四年に行われた彼への罷免に関する国民投票を退けたことは、「安定」を保証するものとして歓迎された。スパルタシスト同盟/米国の同志は、『労働者前衛、Workers Vanguard』二〇〇四年九月三日号で次のように述べた。
「緊急に提起すべき当面の展望は、ベネズエラやその他の地域にたいする米帝国主義の侵略に反対するだけでなく、チャベスとか野党への労働者運動の支持を粉砕するために闘うこと、そして労働者階級を権力へと導く革命的な国際主義の労働者党を鍛え打ち固めることである。そのためには、ベネズエラの階級区分を曖昧にする民族主義に対し非妥協な闘争が必要である。労働者階級支配の勝利した闘争だけが、すなわちアメリカ大陸全土での社会主義革命だけが、土地のない人々の土地を保障し、また石油産業労働者や他のプロレタリアートがその労働で創り出した富を享受できるだろう。」
社会フォーラムは、チャベスのようなブルジョア民族主義者を「グローバリゼーション」に反対する闘士として祭り上あげるなか、労働者階級を「自国」の民族資本家階級に縛り付けることによって、社会主義革命に向けた闘争に反対するのに尽している。実際、世界社会フォーラムがすべてブラジルやインドのような「第三世界」の国々で主催されているという理由は、こうした国々の労働者階級とその国のブルジョア搾取者との間の階級対立を隠蔽することにあったのである。このメッセージは、「グローバル・サウス」のブルジョアジーが「民衆」に加わり「グローバリゼーション」と闘うために信頼できるというものであった。しかし、「第三世界」の資本家たちの主要な関心事は、自身の利益を防衛することであり、そのために彼らは帝国主義者に依存して、労働者階級の最大限の搾取を必要としているのである。
ヨーロッパ社会フォーラムも、被搾取者を搾取者に縛り付けるという同様の目的で、資本主義の下での人道的な「社会的ヨーロッパ」という幻想を押し出し、それを米英両国に代表される「ネオリベラル」モデルに対立させている。こうした「社会的ヨーロッパ」というビジョンの喧伝こそが、ヨーロッパじゅうの社会民主主義の政治家だけでなく親資本主義の労働組合指導者たちを、ヨーロッパ社会フォーラムに惹きつけてきたのである。ヨーロッパ労働組合連合の政治的展望は、二〇〇〇年フランスのニースで開催されたEUサミットに対する抗議で、連合の書記長によって明かにされた。「労働組合とNGOはブリュッセルの意思決定機構に統合される必要がある…。ヨーロッパがさらに競争力を強めなければならないことには確かに賛成である。しかし、新しいヨーロッパはまた、その全ての市民にたいして確たる生活の質を備えなければならない」(『世界社会フォーラムの経済と政治』より引用)。この「さらに競争力を強める」こととは、労働者階級の汗や苦役からよりいっそう利益を絞り取ることを意味している。
人民戦線 : 戦術ではなく最大の犯罪
労働者階級は、資本主義社会の富の創造者として、またブルジョアジーの利益の創出者として、資本主義制度を打倒しその国家を粉砕する社会的力と客観的利益を持った唯一の主体である。これには、ブルジョアジーの独裁から集産化した計画経済を防衛し運営する労働者国家に置き換える社会主義革命を必要とする。こうした革命は、国際的な規模に基づき、欠乏を根絶し全人類の必需品を生産する基礎をすえるだろう。そして、資本主義打倒に向けたプロレタリアの闘争を組織することのできる唯一の手段は、革命的前衛党にほかならないのである。
これこそが社会フォーラムの階級協調主義に対置されるものである。議会政治や政党にうんざりしている活動家の気持ちに合わせるなかで、社会フォーラムは、「進歩的」とされる資本家と「民衆との同盟」が帝国主義の破壊行為を終わらせることができるという神話を助長する人民戦線なのである。人民戦線は、一九三〇年代にスターリニストが労働者革命を阻止するために利用したとっておきの武器であった。トロツキーは、人民戦線に激しく反対し、労働者階級に対する恐るべき結果について絶えず警告を発した。当時トロツキスト指導者であったジェームズ・バーナムは、彼による一九三七年のパンフレット『人民戦線、新たな裏切り』のなかで次のように指摘している。
「プロレタリアートにとり、その党を通じて、自身の独立した綱領を放棄することは、階級として独立した機能を放棄するを意味する…。プロレタリアートは、人民戦線の綱領を受け入れることによって、社会の別の階級の目的を受け入れることになる。つまり、プロレタリアートの利益が資本主義の打倒によってのみもたらされるということを全歴史が実証しているにもかかわらず、プロレタリアートは資本主義の防衛という目的を受け入れてしまうのである。」
人民戦線は、労働者階級や抑圧された人々にとって、たびたび血塗られた反動をもたらしてきた。有名な事例は一九七三年チリの出来事であった。この時チリでは、サルバドール・アジェンデとその仲間の改良主義者たちは、革命的精神をもった労働者階級を資本家との連立政権に導いた。アジェンデは資本主義秩序や国家に反対しないと誓った。つまり彼は、農民による土地の奪取や労働者の工場占拠を終わらせた。それから、米帝国主義に支援されたチリのブルジョアジーは、アウグスト・ピノチェト将軍に頼り、労働者階級と(アジェンデを含む)その指導者たちを攻撃し、三万人の命を犠牲にして残虐な軍事独裁政権を課したのである。
シアトルから社会フォーラムへ
世界社会フォーラムの政治は、シアトルの政治の延長であり、その対立物ではない。国際的に資本主義の影響に反対する多くの若者たちを惹きつける一方で、シアトルでの政治的一撃は、社会民主主義者や労働組合官僚によって呼びかけられた。中国に対する彼らの反共主義的攻撃演説は、中国の歪曲された労働者国家に資本主義の搾取制度を復活させようと目論む帝国主義支配者の利益を反映していた。親帝国主義の人民戦線政治に基づく「直接行動」の抗議は、実際「戦闘的」な階級協調主義にすぎないのである。
社会フォーラムが増殖する背景には、旧ソ連邦における反革命と「共産主義は死んだ」というブルジョアジーのイデオロギーキャンペーンとがある。ソ連邦の破壊によってもたらされた意識的後退の典型的なものは、労働者階級が社会変化の主体として適切ではない、あるいは弾圧の一犠牲者にすぎないという考えである。そしてこの考えは左翼の若者のあいだで流布している。その一方で、労働組合官僚は現在、資本家が簡単に生産拠点をアジアや東欧の低賃金経済圏へと移動させることができるので、「グローバリゼーション」が階級闘争を効果のないものにしたと主張することで、労働者の闘争への裏切りを正当化しているのである。ここ数十年の間に世界経済には確かにある量的な変化が生じたものの、「グローバリゼーション」は質的に新しい現象などではない。資本主義市場経済は「グローバル」であるという事実、つまり銀行や企業が最高の利益を得られる(低賃金の)国々を探し求め、また金融資本が国際化するという事実は、V・I・レーニンがおよそ九十年前に説明している。
「帝国主義とは、独占体と金融資本との支配が成立して、資本の輸出が顕著な重要性を獲得し、国際トラストによる世界の分割がはじまり、最強の資本主義諸国によるいっさいの領土の分割が完了した、そういう発展段階の資本主義である。」(『資本主義の最高の段階としての帝国主義』)
貧困、病気、搾取、戦争は、資本主義制度の常軌逸脱などではなく、資本主義の機能に内在するものなのである。資本主義の打倒によってのみ、生産諸力は、すべての人々に上質な生活水準をもたらすために発展させることができる。資本主義と帝国主義の略奪行為に対して闘う戦闘的な若者や労働者は、社会フォーラムや他あらゆる階級協調の形態と分裂しなければならない。増大する抑圧や残酷な搾取や戦争と闘う唯一の道は、そうした恐怖を産み出す資本主義制度を一掃することである。労働者階級は自身の党を、権力に向けて闘う党を建設する必要がある。われわれは、レーニンとトロツキーのボルシェビキ党の伝統、そして一九一七年の十月革命の伝統に基づいている。われわれは、世界じゅうで新たな十月革命に向け闘っている。そうしたわれわれのもとに参加せよ。
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