『スパルタシスト』32号

2006年4月

米国はイランから手を引け!

帝国主義による核の恐喝を打倒せよ!

  以下の記事は、スパルタシスト同盟/米国の機関紙『労働者前衛、Workers Vanguard』二〇〇六年二月三日より翻訳したものである。

 イラクへの侵略と占領から三年にも満たない現在、米帝国主義はこんどはイランを標的にしている。一月二十六日、ブッシュ大統領は、イランが核兵器開発をもくろんでいると主張して、「核を持ちたいというイランの願望は許されない」との最後通牒を発した。(『ニューヨーク・タイムズ』、一月二十七日号)これは、全世界を数回で破壊できるほど大量の核兵器を備えた国家の大統領から発せられた皮肉を含んだ言葉である。米国の支配階級だけが過去に核兵器を唯一実際に使用し、一九四五年に広島と長崎でおよそ二十万の人々を焼き尽くしたのだ。そして米国政府は今日、自国に脅威と目される国家に対して核の「先制」攻撃を行うという戦略を公言しているのである。

 ホワイトハウスの宗教的狂信者から民主党に至るまで、米国ブルジョアジー内の政治的色合いを問わず、イランを「始末」しなければならないというはっきりした合意が存在する。事実、民主党の共通したブッシュへの批判は、イラク占領が、北朝鮮の歪曲された労働者国家に対してだけでなく、イランにもっと強硬に対処するうえで気をそらすものになっているというものある。最近ヒラリー・クリントン上院議員は、ブッシュがイランに対し軟弱であるとして非難し、「ホワイトハウスがイランの脅威をあえて軽視したために、私たちはイランを叩く大切な機会を逸した」と述べている。(『ワシントン・ポスト』、一月二十日号)。

 イランに対し同様に交戦的態度を示している別の狂信者集団が、イスラエルのシオニスト支配者たちである。イギリスの『サンデー・タイムズ』は、イスラエル軍が「三月末までにイラン国内の極秘のウラン濃縮施設を爆破できるよう準備せよ」との指令を受けていると報道した。(二〇〇五年十二月十一日号)また一月二十一日、イスラエルのシャウル・モファズ国防相は、「イスラエルはイランの核能力を決して許さないだろう。イスラエルは持てる全てを駆使して自衛する能力を持たねばならない。いまわれわれはその準備を進めているところだ」と威嚇した。(『シュピーゲル・オンライン』、一月二十三日)

 米帝国主義やイスラエルによる、また帝国主義者に代わり軍事行動を行う他のどんな勢力によるイランへの軍事攻撃に際しても、われわれマルクス主義者は宣言する。国際的なプロレタリアートは帝国主義の攻撃からイランを軍事的に防衛する立場に立たなければならない。同時に、われわれは反動的なイラン政府にたいし、いかなる政治的支持も与えない。資本主義イランへのわれわれの防衛は条件的である。つまり、帝国主義大国と従属した半植民地国との間の軍事衝突において、われわれの政策は革命的防衛主義である。われわれは抑圧する国家から抑圧された国家を防衛し、被抑圧国だけでなく帝国主義の中心諸国においても階級闘争を推進する。帝国主義者が軍事的冒険に勝利を収めるならば、それは一層の強盗戦争を助長することになる。しかしまたそうした冒険が失敗するならば、それは労働者や抑圧された人々の闘争を援助するのに役立つのである。

 米国ブルジョアジーは、そのお抱えメディアとともに、イランの「脅威」に対するヒステリーを煽り立てるため懸命に努力している。彼らはイランのイスラム政権を気の狂った集団のように描いている。しかし実際の核狂いは、米帝国主義の先頭にいるキリスト教原理主義者である。彼らはたとえどんな妨害があろうとも、イランを攻撃することになんらの躊躇も感じないだろう。米国における労働者、マイノリティ、そして抑圧された人々の真の敵は米国のブルジョアジーである。現在イランを脅かしている米国の支配階級は、国内において反動的な「テロとの戦い」により民主的諸権利をずたずたにする一方で、労働者の年金や保健医療を削減し、雇用を引き下げた同じ資本家階級なのだ。

 国連に派遣されたイラン代表団の報道部門代表者が『ニューヨーク・タイムズ』(一月二九日号)に寄稿した投書は、「イランが核兵器を作るつもりなどない」し、またイランの原子力開発研究が「核拡散防止条約に完全に合致するものである」と強調している。事の真相は、核武装した帝国主義者による脅威という状況のなかで、イランが自衛のために核兵器と適切な発射装置を是が非でも必要としているということである。今日の世界では、核兵器の保有が国家の主権を確保する唯一実際の手段となっている。一九九一年から九二年において、ソビエトの堕落した労働者国家が反革命によって破壊されたが、そのことは米帝国主義に対する主要な軍事的政治的な平衡力を取り去ってしまった。それ以来、米国の支配者たちはその支配に反対すると感知したいかなるものの台頭をも防止するために、たとえ競合する帝国主義列強の軍事力さえ小さくしつつ、圧倒的な軍事力を駆使する政策を展開してきたのである。

 『ニューヨーク・タイムズ』(一月十七日号)に寄稿した投書は、社説に返答するかたちで、次のように適切に述べている。
 「『イランを核開発の道からそらすためのとても良い手段を提案したものはまだ誰もいない』と社説は述べています。しかし、イランが原子爆弾を望んでいる主な理由は、イランで無理矢理「政権交代」を計ろうとするブッシュ政権の強硬派による見え透いた目論みに対抗するためであることは明らかです。
 「イラクで起こったことを目にし、そして『悪の枢軸』なるレトリックを耳にした後では、イランのどの愛国的な軍事指導者も、原子爆弾だけがアメリカ合衆国を抑止すると自国政府に助言するにちがいありません。」

 イスラム宗教指導者によるイラン政権の反動的性格は、米帝国主義に対してイランの側に立つというプロレタリア革命家の義務を決して減じるものではない。一九三五年、ムッソリーニのイタリアがエチオピアに侵攻した時、奴隷制を保持していたハイレ・セラシェ政権の反動性ゆえに、エチオピアの防衛に反対したプロレタリア闘士にたいして、ボルシェビキの指導者レオン・トロツキーは次のように述べた。
 「もしムッソリーニが勝利するならば、それはファシズムの強化、帝国主義の強大化、アフリカと全世界の各地の植民地人民の土気阻喪を意味する。だがエチオピア皇帝の勝利は、イタリア帝国主義ばかりでなく帝国主義全体に対する強烈な打撃となるだけでなく、さらに被抑圧諸国人民の蜂起した勢力をはげます強力な推進力となるであろう。」(「独裁者とオスロの高所について」、一九三六年四月)

 一九三〇年代、エチオピアはイタリア帝国主義者の脅威を回避するためモーゼル銃を必要としていたが、それに劣らず現在イランも米国の脅威を回避するために核兵器を必要としているのである。米国はイランから手を引け! 全ての米軍とその基地は、イラク、アフガニスタン、中央アジアから即時かつ無条件に引き上げよ!

帝国主義に対して階級闘争による反対を!

 今日中東で核武装している唯一の国は、米国の主要な同盟国であるイスラエルである。そのイスラエルの支配者はいつでも核兵器を使用する用意ができていると繰り返し表明してきた。気の狂ったシオニスト支配者たちは、もしイスラエルが軍事的敗北の脅威に晒されるならば、中東全域を核のホロコーストに陥れる政策を抱いている。この政策は、ジャーナリストのシーモア・ハーシュが「サムソン・オプション」と名づけたものである。一九八六年、イスラエルの原子力技術者だったモルデカイ・バヌヌは、イスラエルが核兵器を保有していることを全世界に暴露した。バヌヌによれば、イスラエルは、その当時で二百発以上の核弾頭を所有し、その多くがソ連に向けられていたという。バヌヌは、この勇敢な行為の代償として、二十年近くイスラエルの独房で過ごさなければならなかった。

 米国とイスラエルが核を使うぞと露骨に威嚇する一方で、イランの現政権は核兵器の使用がイスラムの教えに反すると語ってきた。一九八九年に刊行されたディリップ・ヒロの著書『果てしない戦争:イランとイラクの軍事衝突』には、次のようなくだりが記されている。一九八〇年から八八年にかけてのイランとイラクとの間の戦争の際に、アヤトラ・ホメイニは、イラクが化学兵器を広範囲に使用しているのに対抗して、イランも化学兵器を投入するよう軍将校から具申された。その時「イスラムの教えでは、ジハードつまり聖戦であっても、戦士が大気を汚してはならないとして、ホメイニは以前と同様に化学兵器の使用を繰り返し拒否した。」イランとイラク双方で反動的だったこの戦争の集結時に、国連調査団はイランが化学兵器を使用したというなんらの証拠も見つけることができなかった。対照的に、ドイツが第一次世界大戦時に塩素系毒ガスを使用すると、フランスとイギリスも毒ガス攻撃で応戦したのである。このようにイランは、ある意味において、帝国主義列強が持ち合わせていない信頼性というものを備えている。

 昨年秋に明るみに出た二〇〇五年三月十五日付け米国防総省の文書草案『共同核作戦ドクトリン』は、いくつかのシナリオの下で、核攻撃を仕掛ける権限を「統合軍司令官」に付与するよう要求した。「大量破壊兵器の使用を阻止したり報復措置を講じたりするために、米軍は必要であれば断固として核兵器を使用することが極めて重要である」と、この草案は主張している。このようなガイドラインに基づき、軍司令官たちは、二〇〇三年の対イラク戦争の際に、イラクに対し核攻撃を仕掛ける権限を持っていただろう。こうした権限が与えられただろう人々のなかには、元米軍陸軍中将のウィリアム・G・ボイキンのような人物も含まれている。ボイキンは、一九九三年ソマリアでイスラム教徒の軍閥との戦闘について言及したなかで、「私たちの神は彼らの神よりも偉大であるのを知っていた」と主張している。

 不合理で無政府的で利益第一の資本主義制度は、この帝国主義の腐朽時代において、一層不合理になっている。大量殺戮は資本主義制度の「正常」で残忍な機能の集中した表現であり、究極の論理である。この制度は、世界じゅうの無数の人々に対し、栄養失調や医療の欠如や産業上での殺人行為により、日々、死を宣告しているのだ。

 必要なことは、米国内の多人種からなるプロレタリアートの米帝国主義に対する階級闘争による反対である。この過程における主要な障害物は親資本家の労働組合官僚である。彼らは、資本主義の利潤制度や米帝国主義の国際的な利益推進を受け入れているがゆえに、労働者階級を階級敵に繋ぎ止めているのである。労働者階級は革命的指導部を必要としている。もし労働者階級やマイノリティや若者にとって、過酷な搾取や失業や弾圧や戦争などない未来がもたらされるべきであるならば、またもし世界じゅうの貧困にあえぐ人々にとって、飢えや帝国主義への隷属などではない未来がもたらされるべきであるならば、資本主義の全制度が社会主義革命により根底から打倒されなければならず、国際的に合理的な計画経済に取って代えられなければならない。スパルタシスト同盟は、再度鍛え打ち固められた第四インターナショナルの米国支部としての革命的労働者党を建設するために闘っている。そうした党こそ、血塗られた帝国主義体制を一掃し労働者支配を打ち立てる闘いで、米国プロレタリアートを導くであろう。

中国を防衛せよ!

 米国によるイランへの武力による威嚇はまた、中国への重大な脅威を提起している。ソ連に対する冷戦で勝利したアメリカ帝国主義は、今や、一九四九年の革命で資本主義支配を打倒した中国の歪曲された労働者国家を戦略的な標的としている。帝国主義者は、中国での資本主義復活に向け二つの戦略を追及している。それは経済的浸透と軍事的圧力という方法である。

 『アジアタイムズ』(二〇〇四年十二月二日)の記事は次のように記した。「米国の覇権に反対する冷戦後の世界の陣容における一種の前線国家としてイラン・イスラム共和国のイメージが、中国やロシアの外交政策立案者たちの間で、益々優勢になっている。」中国は成長する経済のための原油の十四パーセントをイランから手に入れている。二〇〇四年後半に中国は、イランとの間で、およそ三十年間に亘る七百億ドルもの原油と天然ガスの取引に調印した。この取引の下で、中国の国有石油会社のシノペックは、三〇億バレルもの埋蔵量があると推定されるイランのヤダバラン油田に、五十一パーセントの利害関係を持つことになっている。

 米帝国主義は、資本主義ロシアと中国労働者国家に対して原油資源を支配しようとする米国の努力を高めるだけでなく、中国の戦略的包囲を目的として、中央アジアに軍事基地を設置してきた。米国がイラクで泥沼にはまり込んでいる一方で、日本帝国主義との軍事的結びつきを強化することを含めて、中国に対する「封じ込め政策」を追求してきたのである。例えばこうした強化は、去年、労働者国家中国から資本主義台湾を防衛するため日米協定を取り結ぶことによってなされた。昨年米国は、「中国への対抗策の一部としてインドとの結びつきを改善」(『ニューヨークタイムズ』二〇〇五年七月十九日)しよとするなか、特別な核技術を核武装したインドに提供することに同意した。それは簡単に述べると次のようになる。つまりアメリカ帝国主義の同盟諸国が核兵器を持つことは良いが、いわゆる「ならず者国家」が持つのはだめだということである。

          

 われわれは、トロツキストとして、残存する中国、北朝鮮、ベトナム、キューバの歪曲された労働者諸国家を、軍事攻撃や資本主義反革命から無条件に軍事的に防衛するために闘う。従ってわれわれは、中国と北朝鮮が、帝国主義による核の脅しに対する必要な抑止力として核兵器を実験し保有するのを支持する。中国のつつましい核兵器庫は、そうした抑止力の重要な手段である。

 中国がイランを武装解除しようとする帝国主義の圧力に反対することは必要不可欠である。しかしながら、イランに対する国連の制裁には口頭で反対する一方で、北京のスターリニスト官僚政権は、帝国主義者たちに協力している。中国は、ロシアとともに、イランが国連安全保障理事会に引き出されるべきだという米国とヨーロッパの要求に実際同意しているのである。同様に中国は、北朝鮮による核兵器開発を中止させようと目論む帝国主義の「交渉」の仲介役をかってでているのである。その北朝鮮は昨年、すでに核兵器を開発していると発表した。中国政府の役割は、北朝鮮の歪曲された労働者国家の防衛を掘り崩すいかなるものも中国の歪曲された労働者国家に跳ね返ることを考えると、極めて犯罪的である。

 北京のスターリニストによる帝国主義との「平和共存」政策は、中国自身の防衛を掘り崩すのである。われわれは、歪曲された労働者国家おいて、スターリニスト官僚を打倒し民主的に選出された労働者と農民の評議会に基づく政権に置き換える労働者政治革命のために闘う。そうした革命政府は、国際社会主義革命、特に米国、日本、西欧の帝国主義中心諸国における社会主義革命を通じてプロレタリア支配を拡大するために闘う革命的国際主義の綱領によって導かれなければならない。

束縛されない核のカウボーイ

 二〇〇三年以来、イランは、国際原子力機関(IAEA)の査察に支配されてきたが、IAEAは核兵器計画の何らの証拠も見いだしていない。イランが一月三日にナタンズにある濃縮施設を再稼動すると発表した後で、ブッシュは、制裁を課するためイランを国連安全保障理事会に引き出せと主張した。経済制裁は戦争行為である。イラクに対する一九九一年と二〇〇三年の戦争は、国連が課した制裁によって先行され準備されたのである。

 ブッシュ政権は、シオニストの「ネオコン」によるシンクタンク「アメリカ新世紀プロジェクト」の立場の多くを受け入れている。それは、近東の米国支配を確保する一環として、イラクと同様イランの「政権交代」を長く主張してきた。この展望の中心にあるものは、周辺諸国に従順な政権を設立することによって、イスラエルのまわりに「防疫線」を作り上げるというものである。

 シーモア・ハーシュによる二〇〇五年一月二十九日付の『ニューヨーカー』の記事「来るべき戦争」は次のように報道した。
 「[ブッシュ]政権は、昨年の夏以来、少なくともイラン上空で秘密偵察飛行を実施してきた。焦点となった多くは、公表されまた疑わしいとされたイランの核と化学とミサイル施設の情報収集と標的情報である。その目的は、正確な空襲と短期での特殊部隊による襲撃で破壊可能な三十六か恐らくそれ以上の標的を割り出し孤立させることである。」

 イスラエルの政治家は、一九八一年にイラクのオシラク核施設を爆撃したイスラエルがイランの核施設を爆撃するかもしれないとほのめかした。パレスチナ議会選挙における最近のハマスの勝利に対して、シオニスト支配者たちは、イランに対する威嚇を徐々に強めパレスチナ人への弾圧を強化するために、「イスラムのテロリズム」に関するヒステリーを一層煽りたてるだろう。昨年イスラエルに五〇〇個の「バンカーバスター」爆弾を供給した米国は、イスラエルにイラン攻撃をさせるかもしれない。しかし一九八一年のイラクと違って、現在イランは主に地下に最低九つの異なる施設を持っており、それはそうした作戦をより困難にしている。イランは、イスラエルやペルシャ湾の欧米軍隊を攻撃することで応戦すると警告し、またイランの将軍は次のように指摘している。「世界はイランが二〇〇〇キロの射程をもつ弾道ミサイルを持っているのを知っている。」(ロンドン『オブザーバー』一月二十九日)

  イランへの米国の攻撃には多くの障害物が存在している。イランは世界の原油埋蔵量の十パーセントに位置するために、そうした攻撃は原油価格を国際的により高騰させ、恐らく国際的な経済危機を誘発するだろう。さらに米国の軍隊は、イラクの残忍な占領を強化することで、ひどく広げられている。そうした状況の下では、米国は、徴兵制を再開することを抜きにして、イランのような大きく人口の多い国を占領することはできない。それは益々イラク占領に反対する米国の人々に受けいれられないだろう。またこの間、米国による占領の偶然の結果として、イランのシーア派政権と歴史的に密接な結びつきを保ってきたシーア派の諸政党は、今やイラクで権力を握っている。イランへの攻撃は、イラクの多数派であるシーア派をひどく怒らせ、テヘランの原理主義政権の背後にイランの人々の多くを結集させるだろう。

 フランスとドイツは、国連安全保障理事会がイランを「扱う」べきだという米国の要求を支持している。そしてこのことは制裁へと導くかもしれない。ブッシュは、新たな右翼のドイツ首相アンゲラ・メルケルとの同盟を見いだしている。そのメルケルは、一月二十九日のエルサレムでの記者会見で、核武装したイランが「イスラエルだけではなく、世界の民主主義諸国への脅威でもある」と断言した。(『ニューヨーク・タイムズ』一月三十日)一方フランスの大統領ジャック・シラクは、自身の先制核戦争というドクトリンを発表することによって、ヨーロッパにおいて政治的興奮をよびおこした。シラクは、「あれこれの大量破壊兵器使用を考慮するものだけでなく、われわれに対してテロリストの手段を使う国家の指導者」も脅すなかで、核武装したフランスの「反応」が「従来のものになりえるし、また違った種類のものになりえるだろう」と主張した。

 しかしイランと密に交易しているドイツと大きな投資をしているフランスは、また「交渉」や外交的圧力によって、米国の好戦性をはかりにかけようとしてきた。忠実なる親米のイギリス労働党政府でさえ、ジャック・ストロー外相の言葉で、「軍事的選択は存在しない」と公言している。ブッシュ政権は、安全策のため一方的にならないようにするなかで、最近のロシアによる提案を支持すると発表した。その提案とは、ウラン濃縮がロシア国内で行われるかぎり、イランに民間の核施設を使用させるというものである。イラン高官は、この提案を拒否しない一方で、「イランの核エネルギー需要にとって十分でない」と不平を述べている。

労働者の権力を!

 昨年の六月に大統領に就任したイランのマフムド・アフマディネジャドは、有害な反ユダヤ主義を撒き散らす反動的な人物である。昨年の十一月には、彼は、ナチのホロコーストで六百万人のユダヤ人が虐殺されたのを「神話」だと主張し、またイスラエルが「世界地図から消去される」べきだと述べた。

 CIAに支援されたシャーを打倒した一九七九年のイランのいわゆる「イスラム革命」は、「反帝国主義」の名の下に、国際的に大部分の左翼によって支持された。これには、この国の戦略となる多くのアラブ人労働者に基盤を持つ親モスクワのツデー(大衆)党も含まれていた。国際共産主義者同盟(この時はインターナショナル・スパルタシスト・テンデンシー)は唯一、イスラム勢力との労働者階級の決定的な分裂を欠いた一九七八〜七九年の動乱の最初から、闘争がひどい結果をもたらすだろうと警告した。われわれは、「シャーを打倒せよ! ホメイニに屈服するな! イランにおける労働者革命を!」と呼びかけた。権力を握った後で、ムラーはベールで女性を奴隷化し、数千人もの左翼と労働組合員を虐殺し、クルド人や他のマイノリティーに対する弾圧を強化したのである。

 全ての被抑圧者を導きペルシャ排外主義のイスラム政権を打倒することは、イランの労働者階級の任務である。この展望にとって重要となるのはマルクス主義労働者党の建設である。そうした党は、帝国主義との闘争のなかでまたシオニスト、ムラー、将軍、首長、そして全ての他の資本主義支配者との闘争のなかで、アラブ、ペルシャ、クルド、ヘブライ、スンニ派とシーア派、イスラム教徒とキリスト教徒のプロレタリアートを団結させるため、近東一帯で建設されなければならない。近東における労働者支配に向けた闘争は、アラブ人とヘブライ人の労働者革命を通じた、内部からのシオニスト要塞国家の粉砕を決定的に含んでいる。こうした革命的展望を台なしにしたスターリン主義化した近東の共産党は共に、勤労大衆と被抑圧大衆の間におけるイスラム原理主義の増大に責任を負っている。マルクス主義労働者党は、近東における社会主義連邦に向けた闘争において、この地域のプロレタリアートを原理主義とあらゆる形態の民族主義から分裂させるのに欠くことのできないものである。

 プロレタリアートによる権力の獲得は、社会主義革命を完成し終えるのではなく、ただ社会発展の方向を変えることで革命を押し広げるのである。革命の国際的拡大、特に進歩し産業化した帝国主義中心諸国への拡大に至らないならば、そうした社会発展は阻止され最終的には逆転してしまうだろう。世界中で帝国主義者に従属した人々を防衛するには、米国と他の帝国主義中心諸国における階級闘争の追及を必要とし、また最終的には権力に向けたプロレタリアートの闘争を必要としているのである。もし帝国主義者が人類を核の最終戦争に投げ込むようなことにならないなら、彼らは国際的な社会主義革命を通じて打倒されなければならない。これこそが社会主義革命の世界党であるトロツキー第四インターナショナルを再度鍛え打ち固める緊急の必要性を強調しているのである。