『スパルタシスト』31号 |
2005年10月 |
衆議院選挙 − 国内での緊縮財政と弾圧、海外で拡大する軍国主義
もうたくさんだ!労働者政府に向けて闘う革命的労働者党を!
日本帝国主義から中国と北朝鮮を防衛せよ!
最近終わった衆議院選挙の背景には、郵政民営化についてだけでなく、日本帝国主義が世界を舞台に経済的軍事的にいっそう競争力を持つにはどうしたら最もよいかをめぐる支配階級内での内輪もめがあった。支配階級はみな、緊縮財政、労働組合潰し、国内での弾圧、中国と北朝鮮の歪曲された労働者国家を標的とする軍備増強という基本的諸問題にそろって同意していた。彼らはただ、こうした目標を達成する戦術をめぐって、意見を異にしていたにすぎない。投票日が近づくにつれて、資本家階級の政党である自民党と民主党は、互いに「改革を実行」すると唱えるなかで、より問題の焦点を合わせてきた。ロシア革命の指導者V・I・レーニンは、『国家と革命』の中で資本主義の選挙について次のように述べた。「支配階級のどの成員が、議会で人民を抑圧し、ふみにじるかを数年に一度決めること、―議会主義的立憲君主制ばかりでなく、もっとも民主的な共和制のばあいも、ブルジョア議会制度の真の本質はまさにここにある。」
日本の労働者は、反女性で人種差別主義で反動的民族主義の小泉純一郎とその軟弱な政治的クローンの岡田克也に対して、真に労働者階級の利益に基づく反対を温かく歓迎しただろう。しかし今回の選挙では、労働者階級はいかなる選択肢も与えられなかった。なぜならどの政党も、ブルジョアジーから労働者階級のはっきりした独立に基づく綱領を押し出さなかったからである。共産党と社民党はブルジョア労働者党であり、組織上は労働者階級に結びついてはいるが、その指導部と綱領は完全に親資本主義である。
彼らは、今日のプロレタリアートの任務がより「人道的な」日本資本主義に向けて闘うことだという綱領を押し出している。共産党や社民党に追随する改良主義左翼は、小泉が「クーデター」を決行したとか、「ファシスト反革命」を導いているとか、「ヒトラーのような人物」で「民主主義の破壊者」であるなどと叫んだ。衆議院が解散された仕組みは、こうした改良主義左翼が忠誠を誓う日本ブルジョアジーの「平和憲法」にはっきりと明記されているにもかかわらずである。彼らによるヒステリーの目的は、小泉がブルジョア政治の範囲外に立つ常軌を逸した人だという嘘を押し出すことであり、資本主義が労働者階級の利益において機能するよう改良できるという嘘を押し出すことであった。
今回の衆議院選挙は九月十一日に行われたが、この日に設定したことは極めて大きな効果を及ぼした。いずれの帝国主義国家も、二〇〇一年の世界貿易センタービルへの犯罪的攻撃を、国家弾圧の強化と民主的諸権利の縮小を目論む「反テロ」法を実行する口実として利用した。こうした諸立法は、第一に、移民やマイノリティといった、最も攻撃されやすく孤立していると見なされた人々を標的にする。しかし、われわれが繰り返し警告してきたように、この反テロ「戦争」は、究極的には全ての人々を標的にしており、有事立法の制定で示されたように、とりわけ組織化した労働者階級を標的にしている。日本のブルジョアジーはまた、軍事費を増大させ、軍艦や兵員を世界じゅうに展開している。元々米国ブルジョアジーが日本帝国主義の再軍事化を後押ししたのであるが、しかし日本帝国主義が進めている再軍事化の規模は、一部の米国ブルジョアジーの間にさえ懸念を生じさせているほどである。民主党は、土壇場の票獲得策として、血塗られた帝国主義占領の一翼を担っているイラクの自衛隊を今年中に撤退させると公約した。
ところが民主党は、自民党とまったく同様に、中国と北朝鮮の歪曲された労働者国家を破壊し、再度こうした国々を日本帝国主義の搾取のために開かせようと懸命に努めているのである。民主党は三年前有事立法に賛成票を投じた。この法案は国内の運輸労働組合とアジアの歪曲された労働者国家を標的とするものであった。また今年二月の台湾防衛に関する日米共同声明も支持した。民主党は、その選挙マニフェストの中で、「日米同盟はアジア太平洋地域の安定の要である」と述べている。さらに、春暁ガス田に代表される東シナ海の「一触即発の地帯」に関して、「日本の領土、領海、排他的経済水域を守る」新たな法を提案しているのである。労働者革命に通じて日米安保を粉砕せよ! 中国と北朝鮮の歪曲された労働者国家を無条件に軍事的に防衛せよ! 北朝鮮に対する経済制義を打倒せよ! 日本の海賊どもは全ての中国船から手を引け! 東シナ海の天然資源への中国によるアクセス権を防衛せよ!(「米国/日本の反革命同盟を打倒せよ! 中国と北朝鮮の歪曲された労働者国家を防衛せよ!」、『スパルタシスト』三十号、二〇〇五年五月、及び「東シナ海と太平洋における日本帝国主義の挑発行為を打倒せよ!」『スパルタシスト』付録、二〇〇五年二月四日を参照のこと)
中国政府は、衆議院選から三日間の沈黙の後の九月十四日に、「日本政府とその指導者は、中日両国の絆を改善するために、両国民の相互理解と友好とを促進するため積極的に努力することを希望する」と発表した(『人民日報』)。小泉とその一味から相互理解や友好を期待することなど可能であろうか?帝国主義との「平和共存」が可能であるというスターリニストの夢想は致命的な危険を意味し、中国大衆の警戒心をゆるめ、労働者国家の防衛を掘り崩すのみである。一九四九年の中国革命における資本主義財産諸関係の打倒は、中国を帝国主義への従属から解放し、集産化された経済の建設に結果した。寄生的で民族主義のスターリニスト官僚階層の支配により初めから歪曲されてはいたが、この勝利は労働者、女性、農民にとって巨大な社会的進歩を意味したのである。それは例えば、職業、住居、教育、育児、社会保障、医療に関する権利に現われた。中国革命を防衛するには、アジア一帯での、とりわけ日本帝国主義の中枢でのプロレタリア政権に向けた諸闘争を成功させ、それを通じて革命の国際的拡大を必要とする。われわれは、社会革命の獲得物を防衛するために、国内の主要な障害物である裏切り的スターリニスト官僚を一掃するプロレタリア政治革命を呼びかける。この革命は政治権力を労働者階級の手に据えるものである。
ソ連邦の崩壊 : 国際的なプロレタリアートの歴史的敗北
衆議院選挙の翌日、左翼は何が起こったのかを正確に理解しようとした。一方ブルジョア・メディアは「自民党の歴史的大勝利」を誇らしげに喧伝し、また日経平均株価は一時的に上昇し為替は円高となった。小泉は、増大し続ける失業者や雇用保障のほとんどか全くない労働者を「特権的で保護された」とされる公共部門の労働者と対立させようと望んだ。そして基本的にはその通りになった。労働者階級をこのように分断させた責任は、正しく連合、全労連、全労協の誤った組合指導部にある。彼らは資本家の攻撃と闘うのを拒絶してきたのである。連合は、未組織労働者を組織化する代わりに、時間や資金や持てる資力を注ぎ込んで六百万以上の組合員に電話し、民主党に投票するよう命令した。しかし、暮らしの改善を期待する労働者たちは、選挙結果が判明する以前から苛立ちさえ見せていた。『朝日新聞』の世論調査によれば、実際投票した人の六十一パーセント以上の人々が何も変わらないだろうという考えであった。
日本での顕著な右への移行は、一九九〇年〜九二年の東ドイツやソ連邦や東欧諸国における資本主義復活と不可分に結び付いている。国際共産主義者同盟はこうした反革命と闘った。そしてその反革命は、これらの国々で暮らす労働者に、貧困や失業、そして全面的な民族主義の兄弟殺しをもたらしたのである。中絶の権利や教育の権利といった社会的獲得物は根絶やしにされつつある。今日ヨーロッパでは、資本主義支配者たちは、西欧労働者に高い生活水準を維持しなければならないなどともはや感じていない。こうした高い生活水準の維持は、第二次大戦でのソ連赤軍の勝利後に創り出された東欧の歪曲された労働者諸国家による計画経済の社会的利益と張り合うためであった。いまや世界中のブルジョアジーは、競争相手よりも優位に立とうとするために、搾取率を増大させ、生活水準を押し下げ、社会プログラムを削減しなければならない。
日本政府が予算を社会サービスから軍事費へと移しまた人々を画一的に統制しようとするなかで、生活水準の低下と民主的諸権利への攻撃は日本の再軍事化に直接結び付いている。この国で起こっていることは苛酷であり、また日本は衰退が進行した時期にある資本主義である。いまや日本ブルジョアジーは全体として、彼らが緊縮財政を実行する権限だけでなく、政治的弾圧法を実行する権限もあると信じている。日本政府は、国家弾圧の巨大な武器である警察、裁判所、刑務所を駆使するなかで、福祉を削減し、税金を引き上げ、マイノリティや移民の全権利も否定し、人々をただ同然で働かせ、シングルマザーやその子供たちについては餓死同然に追い込むことができると思い込んでいるのである。衆議院選挙から一週間もたたないうちに、一人の死刑囚の死刑が執行され、また別の死刑囚の有罪判決が確定された。そして自衛隊は、神奈川県座間に緊急即応連隊を配置すると発表した。さらに佐世保の商店街では完全武装の自衛隊員たちを行進させ、北海道の街頭では戦車パレードを敢行した。いったん郵政民営化法案が可決されると、ブルジョアジーの次なる課題は、憲法と教育法の改定であり、そして労働契約法と新たな共謀罪法の制定である。
しかし日本のこうした右翼的傾向は逆転させることができないものではない。資本家たちがうまくやり通すことができるものは、階級闘争のレベルに拠っているのである。ブルジョアジーによる一般的な攻撃や特に民営化に対して勝利するには、労働組合が労働者を動員して労働者の社会的力を行使し、資本主義の利潤生成の歯車を停止させることである。しかし、こうした労働者の力を解き放つうえでの主な障害物は、腐敗した親資本家の労働組合官僚である。彼らは、低賃金労働の契約者のように、また経営者のための政治警察のように機能しているのである。レーニンと共にロシア革命を導いたレオン・トロツキーは、『帝国主義衰退期における労働組合』のなかで次のように述べている。
「われわれの時代の労働組合は、労働者を従属させ規律の枠におしこみ、革命を妨害するための帝国主義的資本主義の捕助的手段として役割をはたすか、あるいはその反対にプロレタリアートの革命運動の手段になるか、このいずれかしかない。」
必要なことは労働組合内での鋭い政治闘争である。これは労働者党に向けた闘争と不可分に結び付いている。そしてこの労働者党の目的は、資本家や改良主義左翼のための選挙基盤として貢献することなどではない。こうした党は、労働組合を、労働者階級や資本主義下で抑圧された全ての人々のための闘う大部隊として動員するだろう。そして、ブルジョアジーを収奪し平等主義の社会主義社会を建設する労働者政府に向けた闘争のなかで、労働者の諸闘争に革命的指導部を供給するだろう。
労働者階級の政治的独立を
八月八日に衆議院が解散されることになったのは、参議院で郵政民営化法案が否決されたためであった。われわれは郵政民営化に反対である。なぜならば、それは単に郵便労働組合に対する攻撃であるばかりでなく、あらゆる労働組合を標的にしており、全ての労働者の生活条件と労働条件を引き下げるからである。郵便労働組合潰しは小泉の当初からの目標であった。小泉は民営化によってなにを実現したいかと質問されて、「答えは簡単だ。公共部門の人員削減だ…」と返答した(『週刊ダイヤモンド』、二〇〇一年一月二十日号)。今よりずっと温和だったとされる「小泉以前」の時期に起こった国鉄や電電公社の民営化の結果を実際見る必要がある。何十万もの雇用が失われ、雇用保障のない「非常勤」労働者があらゆる産業で雇用されるようになり、「サービス残業」という名目の奴隷労働が増大し、安全性は去り、スピードアップがもてはやされているのである。これは今年四月に関西で起こった悲惨な鉄道事故で最もはっきりと証明された。この事故で百人以上の乗客が貪欲なJR西日本のために命を落としたのである。JR西日本は、組合指導部の手助けのもとで、会社と株主の利益を増大させるために、運転手に常軌を逸した苛酷な運行スケジュールを課していたのである。
郵便労働者は、二〇〇三年に施行された郵政事業の部分的民営化の影響をすでに感じ始めている。十六時間に及ぶ「夜勤」が導入されて以来、過労死が頻繁に起こるようになった。いまや郵便局では、十万人以上の非常勤労働者が働いており、なかにはたった一日かぎりの日雇い契約の労働者もいるのである!こうした非常勤労働者の給料は常勤労働者の給料の四分の一である。非常勤労働者の七割が女性であり、女性の猛烈な搾取が日本資本主義の主要な特徴であるという事実を如実に示している。労働組合の誤った指導部は、こうした増大しつつあるいわゆる非常勤労働者たちを守る何らの方策も講じてこなかったのである。異なる範疇の労働者を雇用することは、職場の部署どうしを対立させ、若者や女性の労働者の搾取を一層強化し、その一方で年齢のいった主に男性の労働者を全体的に益々切り捨てしやすくする。こうした状況は、マイノリティ、契約労働者、パートタイマー、フリーターといった未組織労働者を組織化するための真の運動を必要としているのである。こうした運動は、経営者の目論む分断攻略策を頓挫させるだろう。すべての人に労働組合の恩恵と保護と賃金を!同一労働に同一の給料を!
資本主義社会の根本的な分界線は資本家階級と労働者階級の間にあり、両者の利益は非妥協的なものである。資本家は、工場や輸送手段といった生産手段を所有し、労働者の搾取を通じて利益を引き出す。労働者階級は、資本主義秩序やその国家を一掃し、生産手段を奪取して、計画化され集産化された経済を打ち立てる社会的力と客観的利益を持った唯一の階級である。この計画化され集産化された経済は、人々の必要物を十分満たす労働者民主主義を通じて機能する。しかし、こうしたことが現実のものとなるには、プロレタリアートの運動を前進させるうえで障害物となる共産党や社民党やあらゆる改良主義者の綱領から労働者階級を引き離し勝ち取ることが必要なのである。鋭い階級闘争の過程で、またその社会的力だけでなく歴史的利益の理解において労働者階級を忍耐強く教育する革命党を手段として、労働者は、自身のためそして抑圧された全ての人々のために、全資本家階級とその政府に対し闘う階級として自身を意識するようになるのである。
しかし、連合、全労連、全労協の指導部は、階級闘争のかわりに、階級協調の綱領を持っている。八月に参議院で郵政民営化法案の投票が行われるまでの間、これら労組は、請願運動に従事し、パンフレットを配布し、会議を組織し、集会を開き、国会の前での座り込み抗議を行った。こうした運動は、自身の名で闘う勢力としてのプロレタリアートを動員することではなく、他の勢力へ引きずり込み、組合潰しを意図する政府に圧力を加えることだったのである。この自殺的運動のなかで、労働組合は、共産党や社民党の内部に同盟者を求めたばかりでなく、自民党や民主党にも同盟者を求めたのである。その民主党は、もし政権を獲得したならば、公務員労働者の給料を二〇パーセント削減すると公約していたのである。
全労連は、七月十五日発行の広報誌で、ある自民党員が郵政民営化法案に反対するメッセージを書き送ってきたことを誇らしげに掲載し、次のように記している。「参院での廃案に向け引き続き地域と国会闘争に全力を挙げるとしています。」全労協のなかでより急進的と思われる郵便労働組合は次のように主張した。「…社民党福島瑞穂党首をはじめ社民党や民主党の多くの議員のみなさんから熱い連帯のあいさつを寄せて頂いている。具体的な議員対策として衆・参の全自民党議員国会事務所を訪問し…私たちの要請に対して自民党の議員からも紹介議員受諾の返事が届いている。」(『全労協』、八月二十日)連合は、民主党候補者や「反小泉の自民党」候補者たち、つまり神道の神主のような綿貫民輔や国の助成金着服の親玉である亀井静香といった郵政族議員に投票するようはっきりと呼びかけたのである。
以前も現在も必要なのは生産点で闘うこと、つまりストライキを呼びかけることである。郵便労働者は、彼らの仕事を防衛する闘いを、公共サービスへの攻撃で最も多くの被害をこうむる貧しい人々や労働者たちのニーズに訴える要求と結びつけることによって、大規模な支援デモを動員する機会も能力も持っている。しかし、労働組合官僚は、日本政府によって出された法律が不可侵であるという大前提に立っているが、この政府は完全に支配階級の執行委員会として活動しているのである。これは、組合官僚が公務員労働者によるストライキ禁止の法律を神聖視していることに見ることができる。この法律は、GHQ占領下にマッカーサーの命令で、日本政府が課したものである。しかし、労働運動が勝ち取ったあらゆる重要なものは、経営者の法律に抵抗するなか階級闘争に労働者を動員することによって達成されてきたのである。国営企業労働関係法を引きちぎれ!
労働組合官僚の裏切り
現在労働組合を運営している階級的裏切り者たちは、とうの昔にその労働者階級基盤から分離してしまった。こうした系列資本家たちの改良主義的代理人は、資本主義秩序と極めて密接に結びついており、そのため企業内組合の官僚の四割以上が企業管理職の地位におさまっている。全若者世代が「ストライキ」という言葉の意味さえ知らないでいるなかで、階級闘争の欠如は、かつて階級闘争で得られた教訓が失われつつあことを意味する。
われわれは、資本主義搾取者に対して、全労働者階級の統一に賛成である。こうした統一を達成するために、われわれは、同一産業の全労働者をひとつの労働組合に団結する強力な産業別労働組合を呼びかける。われわれは、あらゆる労働組合内で労働者階級の異なる政治的傾向が代表になる権利に賛成である。また、そうした傾向が他の組合員を自身の政治的観点に勝ち取ろうとするなかで、脅し抜きで経済的政治的問題に関してその立場を議論する権利に賛成である。しかし、異なる政党を基盤として競合しあう労働組合に労働者階級を分断することには反対する。それは、同一産業内の労働者を分裂させるだけでなく、労働組合が労働者の利益を増大させないで、結局いつもその結び付いた特定政党の利益を増大させる道具となってしまうからである。
賃下げなしの労働時間短縮のための戦いは、日本において文字通り生と死の問題である。そしてそれは、主要産業における人権差別主義の「日本人オンリー」雇用体制を打ち破ることと直接結び付いている。女性とマイノリティと移民労働者は、労働時間短縮に向けた闘いのなかで重要な同盟者である。必要とされるのは、消費者物価の上昇に関連した労働時間のスライディングスケールと賃金のスライディングスケールである。また、育児の負担を軽減するために、労働組合は全額支給の母親と父親の育児休暇を勝ち取る闘いを取り上げなければならない。無料で二十四時間制の保育と介護制度を! ニートやフリーターのために、労働組合が運営し企業が費用を負担する職業訓練プログラムを! われわれは、基本的産業におけるマイノリティと移民労働者の雇用禁止を打ち破り、ここに住む全ての人に完全な市民権を勝ち取るよう呼びかける。外国人労働者を組織することは、労働組合に強力な闘争力を吹き込み、また国外の労働者との階級的団結の掛け橋として貢献するだろう。
これが資本主義の民主主義である
われわれの左翼敵対者たちは、社会主義革命の綱領を実際決して支持しないが、機会あるごとに資本主義の革命的打倒という目標に口先だけの同意を示してきた。しかしながら、ソ連邦が崩壊し(これには破算した革命の墓堀人のスターリニストが主な責任を負っている)、いわゆる「共産主義の死」をめぐり執拗な運動が繰り広げられた後で、彼らは社会主義へのいかなる言及もほとんどしなくなった。そして今日、自身を日本のブルジョア民主主義の最良の防衛者として演じているのである。
「民主主義」は破壊されつつあるといった繰り返し文句は、「この国の民主主義は死んだ」とう見出しを掲げた保守的なスポーツ紙『日刊ゲンダイ』から、直接行動のアナーキスト的ミリューまで、その政治的範囲を広げている。このアナーキストミリューのひとりは、八月十五日に靖国神社前の勇敢な抗議者たちの逮捕を、次のように表現した。「路上の血反吐とともに、人々の自由、権利、民主主義もボコボコにされ血を流している。」「信頼できる野党」の共産党は、その衆議院選マニフェストで、二十一世紀の早い時期に「民主的な連合政権」をつくると謳っている。この連合政権とは、労働者階級諸党と資本家諸党との階級協調主義による政治ブロックである人民戦線政府の婉曲表現である。このブロックのなかでは、労働者階級の政治は、ブルジョア国家と資本主義の防衛においてブルジョアジーの政治に従属するのである。かけはしは、衆議院選前に出した声明で、小泉の「トップダウン」手法が、「伝統的なブルジョア議会制民主主義をも破壊するものである」(八月二九日)と述べている。
一般的な「民主主義」への信頼、この民主主義がブルジョア民主主義であり、その有用性と必要性において歴史的に制約された民主主義である点を決して理解しないこと、それは、数十年もの間、あらゆる国のとくに社会民主主義の特徴となってきた。革命的な指導者だったカール・リープクネヒトとローザ・ルクセンブルクが殺害された直後、レーニンは、ドイツの社会民主主義者を激しく批判して次のように書いた。
「資本家がまだその所有をたもっているばあいでも、現代社会における民主主義がブルジョア民主主義以外のものに、すなわち、いつわりの、うその民主主義的看板でかくされたブルジョア独裁以外のものになりうるかのように、考えている。…資本家がその所有をたもっているかぎり、あらゆる民主主義はブルジョア独裁の偽善的な覆いにすぎないというように、この問題を提起しないなら、資本のくびきから労働を解放する問題を真剣に解決することなどは問題になりえないということである。普通選挙や全人民の意志や投票者の平等についてのあらゆる言辞はまったくの欺瞞である。というのは、搾取者と被搾者のあいだ、資本の所有者および有産者と現代の賃金奴隷のあいだには、平等はありえないからである。」(「労働組合二回全ロシア大会での報告」、一九一九年一月十二日)
日本の排外主義的左翼はおしなべて、防衛する必要がある日本の「良い」資本主義と、新リベラルでアメリカ流の「悪い」資本主義があるなどという嘘を喧伝している。社民党の「考え」は、「『痛み』をやみくもに押し付けるアメリカ流の『弱肉強食の競争社会』を目指すのではなく、誰もが安心して暮らせる社会への改革こそ重要だ」(『社会新報』、八月二九日」)というものである。この見解はかけはしグループによって繰り返し語られている。「…民主主義と権利の破壊に反対し、『優勝劣敗』の市場原理主義的競争社会に替わる連帯と公正のための『もう一つの社会』を実現する労働者・市民の運動を創出し…」(『かけはし』、八月十七日)中核派は、八月二十二日発行の『前進』で、小泉の構造改革について次のような泣き言をもらしている。「日帝の戦後体制、戦後的階級関係、戦後的価値観(平和、人権、民主主義、平等など)のあらゆる戦後民主主義的なものを一掃しない限り、貫徹できないのである。」日本帝国主義の進歩的性格と称せられるものへの何という根深い幻想であることか!
民主的諸権利は、権力に向けた闘争のなかで、労働者階級にとって計り知れない価値を持っている。左翼や反戦活動家が新聞やビラを配ったため逮捕されたり、人々が血塗られた日本帝国主義の象徴に抗議して警官に殴られ逮捕されたりすることは、断固として闘わなければならない攻撃である。しかし、これこそ現在の時期におけるブルジョア民主主義の素顔に他ならないのである。
日本帝国主義の「戦後の価値体系」は、自国での労働者階級の搾取を基盤とし、また海外での帝国主義支配と拡張とに基づいている。そして、在日朝鮮韓国人と中国人に対する制度化した人種差別主義を維持し、部落民やアイヌ人に対する強制的な分離の制度を維持することに基づいている。さらに、女性を産業化した国家のなかでは最低の地位に押しとどめることに基づいている。こうした戦後のシステムから恩恵をこうむった者は、ただ資本家たちとごく一部の特権的な労働者たちだけである。資本家たちは世界中で莫大な利益をあげている。そしてごく一部の特権的な労働者たちは、国外における日本帝国主義の略奪による利益のおこぼれにより買収されてきたのである。
ディミトロフと中核派は何を共通としているのか?
中核派は、衆議院選挙の結果に関する声明のなかで、小泉が「ファシスト的政治クーデター」を実行したと主張している。ファシストが資本家階級の中のより反動的な一翼による独裁政権だとする政治的テーマは、ブルガリアのスターリニストで、一九三五年以降コミンテルンの書記長としてスターリンの傑出したスポークスマンだったゲオルギー・ディミトロフの著作にその理論的起源を持っている。ディミトロフは、「人民戦線」というスターリニストの裏切り的政策のスポークスマンとして、最も記憶に留め置かれている。彼は、ファシズムを倒すには、ブルジョアジーのなかの「進歩的翼」と同盟すべきであると主張した。これは、その時以来、スターリニストと他の改良主義者の永遠に続く戦略となってきた。そして、これこそ正に中核派が二〇〇五年の東京都議会選挙で行ったことである。その時彼らは、「都政を革新する会」の候補者として立候補した長谷川英憲を支持したのである。
小泉は ファシストではなく、またファシスト的な体制を指導してもいない。小泉は、ブルジョア政治の範囲において、右に位置する超民族主義者である。彼は、ブルジョア民主主義の枠内で、右翼体制を指導している。このブルジョア民主主義は時々多少とも文明化されうるが、しかしそれはブルジョア独裁のままである。レオン・トロツキーは一九三六年に次のように書いた。「金融資本は、労働者と戦うために訓練された特別の武装部隊を創り出すのを余儀なくする…。ファシズムの歴史的機能は、資本家が民主的機構の助けで統治し支配することができないと知った時、労働者階級を粉砕し、その組織を破壊することであり、政治的自由を窒息させることである。」(「フランスはどこへ行く?」)日本の支配階級は、現在ファシストを権力に据えることを必要としていない。しかし、もし自身の階級的独裁を維持するのに必要となる場合には、プロレタリアートに対して解き放つためにファシストを保持しているのである。
資本主義国家を統治する小泉を違うブルジョア政治家に置き換えても、あるいは共産党とか社民党に置き換えても、根本的には何も変わらない。日本の労働者階級が自身の福利への絶えざる攻撃に対して抵抗するのは必然的である。スパルタシスト・日本グループは、国際共産主義者同盟(第四インターナショナリスト)の世界中の同志と共に、資本主義の墓掘り人としての歴史的任務という意識をプロレタリアートにもたらすために闘っている。資本主義制度を一掃するために、レーニン主義-トロツキスト前衛党を建設しなければならない。それは、平等主義の社会主義社会を創設するため、貧困や抑圧に対するあらゆる抵抗をひとつに結び付けるためである。その社会主義社会は、人間の人間による搾取や抑圧を永遠に終わらせる世界社会主義秩序の形成に向けた決定的一歩を整えるだろう。